パソコンを使って作曲や演奏することを、DTM(デスクトップミュージック)と言います。
今は個人でもパソコンと少しの機材があれば高度な楽曲を製作でき、動画投稿サイトなどを通じて楽曲を発信できる時代。
かつてはオーディションやスカウトなどで事務所に見出されるしか方法がなかったアーティストへの道も開け、米津玄師さんを筆頭にプロになる人も増えてきています。
今回は「DTMをはじめてみたい」と考えている人のために、必要なパソコンのスペックや、必要機材について初歩からご説明します。
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DTMに必要なパソコンの推奨環境
パソコンでDTMを行うためには曲を編集するソフトが必要です。
簡単な動画編集ソフトがインストールされているパソコンは多いですが、楽曲の編集ソフトが最初からインストールされているパソコンは滅多にありません。
つまり別途編集ソフトを買う必要があるということです。
楽曲編集ソフトはDAW(ダウ)と呼ばれ、録音した曲を再生したり、複数の音源を組み合わせて作曲も可能です。
DAWをサクサク動かせるスペックが、買うべきパソコンの最低条件。
そこで、使いやすさで人気の「Cubase」と、業界標準ソフトでプロのレコーディングスタジオなどでも導入されている「Pro Tools」の推奨環境をそれぞれ見てみましょう。
Cubase
Cubaseの動作環境はOSがWindows7~10で、CPUはCore i5以上、メモリは8GB以上となっています。
ストレージの空き容量としては30GB以上、ディスプレイの解像度も1920×1080が必要です。
これはミドルスペック以上のパソコンが必要ということ。
予算の目安として、パソコンだけで15万円前後は考えておきましょう。
ノートパソコンならコンパクトさを優先するより、15インチ以上のサイズで性能に余裕のあるモデルがおすすめです。
Pro Tools
Pro Toolsの推奨環境は、OSはWindowsならば7~10。
CPUはインテルCore i5以上で、メモリは16GB。
ビデオ再生をする場合はメモリは32GBが推奨。
CPUがCorei5でメモリが16GBといえば、ミドルスペックからハイエンドクラスと言えます。
10万円前後の低価格パソコンだと、まともに動かせない恐れがあります。
プロ用の編集ソフトを使うつもりなら、パソコンもそれなりのスペックが必要です。
20万円~の予算は考えておきたいところです。
パソコン購入時に必要な基礎知識
ほとんどパソコンの知識がない方からすると、「CPU」や「メモリ」と言われてもよくわかりませんよね。
そこで基本的なパソコンのスペックについてまずご説明いたします。
ある程度パソコンに詳しい方は、このパートは飛ばしてお読みください。
OSとは
OSとは「オペレーティングシステム」と言い、コンピューターの入出力や同時並行処理を管理するプログラムのこと。
具体例を挙げるとWindowsやMacのことです。
Windowsには64ビット版と32ビット版がありますが、特別な理由がない限り64ビット版を選んでください。
というのも、32ビット版はメモリをたくさん搭載できないという難点があります。
MacでもDTMはもちろん可能です。
多くのクリエイターがMacでDTMをしていますし、操作感が滑らかでデザイン性の高さからも高い人気を誇っています。
とはいえ全体的に見るとWindowsの方がユーザー数は圧倒的に多いです。
DTMに必要な機材もWindows対応のものが多いため、Appleへの強いこだわりがなければWindowsを選んだほうが無難ですよ。
CPUとは
中央処理装置としてパソコンの脳に相当するパーツです。
「プロセッサ」と呼ばれることもあります。
CPUはパソコンの処理速度を大きく左右するとても大切なパーツ。
スペックの高いCPUを使えば使うほどパソコンもサクサク動きます。
そしてDTMではCPUの処理能力がとても重要です。
CPUの性能が低いと、演奏が途中で止まってしまったり、一度にたくさんの処理をこなすことができず速度が遅くなったりします。
例えばピアノとギターの音源などを同時に起動すると、音が途中で途切れてしまうことも。
予算が許すなら、できるだけ高性能なCPUを搭載したパソコンを買いましょう。
CPUの見分け方
「CPUが大事ということはわかったけど、何をどう判断すればいいのかわからない」
という方も多いですよね。
たとえばパソコンのスペック表を見ると、Intel Core i7-9700Kなどの表記が見つかります。
初心者の方は、少なくとも「Core i○」の数字の部分をチェックしましょう。
数字が大きいほど性能は高く、DTMをメインに考えるならCore i5以上は必須。
Core i3やCeleron、PentiumといったCPUは性能が低いため、DTM用のパソコンには向いていません。
メモリとは
メモリは作業領域のことであり、一度に同時作業をするために必要なパーツ。
RAMと表示されていることもあります。
メモリが多ければ多いほど、一度に多くのアプリを開いて同時作業をすることができます。
通常のビジネス仕様ならメモリは4GB程度でもそれなりに動かせますが、DAWを動かすなら8GB以上は必須。
さらにソフトによっては16GB以上必要です。
デスクトップパソコンなら後からメモリを増やすのも比較的簡単ですが、ノートパソコンだとメモリ増設ができないモデルもあります。
ある程度知識がないとパソコンを壊してしまったり、動かなくなるリスクもあるので、最初からメモリを多く搭載したパソコンを選んだほうが安心ですよ。
ストレージとは
ストレージとは、記憶装置のこと。
かつてはハードディスク(HDD)が主流でしたが、今はソリッドステートドライブ(SSD)が人気。
SSDはHDDよりデータの転送速度がはるかに速く、Windowsの起動時間も大幅に短縮されます。
ただし、SSDはHDDより値段が高いため、SSDとHDDを組み合わせたデュアルストレージがおすすめ。
SSD 256GBとHDD 1TB(1000GB)という構成はよく見かけますね。
グラフィックボードとは
グラフィックボードは通称「グラボ」や「GPU」と呼ばれ、ディスプレイに画像や映像を映すためのパーツ。
CG制作や動画編集、パソコンでゲームをする場合はGPU性能がとても重要ですが、DTMではさほど重要ではありません。
CPUにも基本的な映像出力機能は備わっているため、DTMメインに考えるならGPUは無視してもよいでしょう。
「いずれはミュージックビデオなどの動画も作りたい」
「時間があるときはオンラインゲームもやってみたい」
という方は、GPUを搭載したパソコンを検討してみてください。
ただし、GPUの有無でパソコンの価格は数万円以上変わることを覚悟しましょう。
パソコンが安くなる時期
パソコンは高額な商品ですから、少しでも安く買いたいですよね。
ましてDTMをする場合は、パソコン以外の機材にもお金がかかります。
一般的にボーナス時期や年度の変わり目は、セールやキャンペーンが実施されることが多いです。
最新のモデルにこだわりがなければ、パソコンやCPUなどのモデルチェンジのタイミングを狙うのもよいでしょう。
とはいえ、安くなるタイミングを待ち続けるのは得策と言えません。
気になっていたモデルの在庫がどれだけあるかはメーカーの中の人しかわかりませんし、何らかの理由で販売終了になるケースもあります。
パソコンに限ったことではありませんが、「買いたいときに買う」がベストですよ。
中古をおすすめしない理由
中古パソコンの購入はリスクが高いのでおすすめしません。
というのもパソコンのパーツは消耗品で、一般的に4~5年も使うと何らかのトラブルが起きたり、故障で動かなくなる可能性があります。
とくにHDDは徐々に劣化していくため、ある日突然動かなくなってしまうことも。
何かトラブルが起きたときも、中古パソコンはメーカーの保証が切れていて、適切なサポートを受けられません。
有償修理になったり、ほんの数ヶ月で使えなくなったりすると、結局出費がかさむだけですよ。
自分でパソコンを修理できるだけの知識と技術があるなら、中古品から状態の良いものを探すのもよいでしょう。
初心者の方は、保証やサポートが充実している新品を買いましょう。
DTMに必要な主な機材
つづいてパソコン以外でDTMに必要な機材をご紹介します。
DAWソフト
この記事の前半でもお伝えしましたが、とにもかくにもDAWソフトがないとDTMはできません。
レコーディングしたり、エフェクターをかけたり、音楽制作のあらゆる場面で必要です。
ソフトによって生音の録音を得意としていたり、内蔵されている音源が充実していたり、得意分野が異なります。
まずは「Cubase」といったメジャーなものを買って、徐々に知識を増やしていくのがよいでしょう。
オーディオインターフェイス
エレキギターなどの楽器や、ボーカルのマイクをパソコンにつなぐための機材です。
パソコン本体にもヘッドフォンやマイクの端子はありますが、より品質の高い音声録音をしたいなら、専用のケーブルを搭載したオーディオインターフェイスを利用しましょう。
3,000円前後で買えるものなら「BEHRINGER UM2」がおすすめ。
10,000円以上出せるなら「KOMPLETE AUDIO 6」が人気です。
モニタースピーカー
モニタースピーカーとは単なるスピーカーとは違い、音楽制作で使われる業務用のスピーカーのこと。
楽曲制作を行うときは音源をフラットに出力し、音そのものを正確的に捉えられるスピーカーが必要なのです。
アンプが必要なものは「パッシブスピーカー」、電源ケーブルだけで利用できるものは「アクティブスピーカー」と言います。
1万円台で買える「MACKIE CR3スピーカー」など、十分クリアなステレオサウンドが得られるものもありますよ。
もう少し本格的なものを選ぶならば「YAMAHA MSP5 STUDIO」がよいでしょう。
多くの高い評価を獲得しているモニタースピーカーですが、かなり大きいので置き場所に悩むかもしれません。
モニターヘッドホン
スピーカーと同じように、音源をありのまま正確に聞き取るためのヘッドホンも重要です。
一般的なヘッドホンより音の解像度が高く、バランスの良い「モニタリング用」を使いましょう。
クリアな状態の音源を正確に聞き取れるので、編集もスムーズになりますよ。
おすすめはリハーサルスタジオやレコーディングスタジオなどで幅広く使われているモニターヘッドホン、SONYのMDR-CD900ST。
30年以上前に登場して以来、多くのミュージシャンやサウンドエンジニアから高い信頼と評価を受けているロングセラー商品。
高域から低域まで原音を忠実に聞き取ることができ、価格も初心者でも無理はない程度なので、本格的にDTMを取り組みたいと考えている人にぴったりです。
マイク
ボーカルの音声を記録するためのマイクは、主に2種類あります。
カラオケやライブなどで使われる、よくある形のタイプが「ダイナミックマイク」で、わずかな音の振動にもしっかりと反応する繊細な物が「コンデンサーマイク」です。
初心者でも手が出しやすい価格でありながら高い機能性を誇るダイナミックマイクとして人気なのは、BEHRINGERのUltravoiceXM8500。
BEHRINGER(ベリンガー)はドイツの音響機器メーカーで、他メーカーと比べて圧倒的に低価格でありながら品質の高いマイクが生産されています。
コンデンサーマイクのリーズナブルなモデルとしてはRODE(ロード)のNT1-Aがおすすめ。
ダイナミックマイクとほぼ変わらない価格でありながら、ノイズが少なくクリアな録音が可能です。
スターターセット
ここまでご紹介した機材を、ひとつずつ比較検討しながら揃えていくのは大変ですよね。
パソコンや機械が苦手な方、機材選びで迷いたくない方は、DTMスターターセットがおすすめです。
オーディオインターフェイスやDAWソフト、それからヘッドホン、ボーカル用コンデンサーマイクなどがすべてセットになった商品で2~3万円前後で買えます。
DTMスターターセットとして人気が高いのは、PreSonusのAudioBox iTwo Studio。
オーディオインターフェイスやDAWソフト、それからトラックレコーディングソフトウェアや、コンデンサーマイク、モニターヘッドホンがすべてセットになっています。
付属しているDAWソフトも、オーディオのレコーディングからミックスダウンやマスタリングまで対応できるので、本格的に取り組みたい人にもおすすめです。
DTMにおすすめのノートパソコン
ここからはDTMにおすすめのパソコンについてご紹介します。
持ち運びやすさや手軽さを優先して、ノートパソコンに絞ってコスパの高いものをピックアップしました。
予算や用途に見合ったものがあるか、ぜひチェックしてみてください。
掲載している仕様および価格は記事執筆時点のものです。最新価格や期間限定キャンペーンの有無については各公式サイトにてご確認ください。
HP Spectre x360 13
「持ち歩くものにはこだわりたい!」
という方におすすめしたいのは、HPのSpectre x360 13というモデル。
高級感のあるデザインと持ち運びやすいコンパクトなボディ、さらにDAWソフトを動かせるだけのスペックを兼ね揃えています。
CPU | Core i7-8565U |
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GPU | Intel UHD Graphics 630 |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 512GB SSD |
価格 | 159,800円~ |
アルミニウム削り出しの強固なボディでありながら、触り心地はとてもなめらか。
角部分もエメラルドカットされ、細かいところまでこだわって作られています。
カラーはアッシュブラックとポセイドンブルーの2種類から選べるのもうれしいですね。
ただし、ディスプレイサイズは13インチと小さいので、快適に作業がしたいなら外部のディスプレイにつなげましょう。
DAIV-NG5800M1-S5
DTMはもちろんのこと、動画編集や写真などの画像加工もサクサク快適に作業したいなら、クリエイター向けのパソコンがおすすめ。
マウスコンピューターのDAIV-NG5800は、あらゆるクリエイティブ用途に対応可能なハイスペックマシン。
長く使えるパソコンを探すなら、候補に入れてみてください。
CPU | Core i7-8750H |
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GPU | RTX2060 |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 480GB SSD |
価格 | 199,800円~ |
「DTM以外興味がない」
という方にはオーバースペックですが、ミュージックビデオを作ってYoutubeへの配信なども考えていくなら、これくらいのスペックは欲しいです。
搭載されているGPUは、最新のオンラインゲームもスムーズに遊べる実力があるので、気分転換にも最適。
パソコンに20万円前後かけられるなら、クリエイターパソコンは要チェックです。
実機レビュー
DAIV-NG5800シリーズは5Nに名称が変わっています。
RAWデータの書き出しや4K動画のエンコードもスムーズで、最新3Dゲームもサクサク動かせるほど高性能なパソコンです。
こちらの記事もあわせてご覧ください。
適切な機材でDTMに取り組もう
今回はDTMに興味がある方へ向けて、DTMに必要なパソコンのスペックや機材についてご紹介しました。
適切な機材をそろえたら、あとは楽曲の制作に集中するだけ。
Youtubeなども活用して、どんどん楽曲を世の中に発信していきましょう。
「とりあえずDTMをやってみたい」
という方は、まずは10~15万円前後のノートパソコンと、DTMスターターキットを買ってみるのがおすすめ。
経験を積んでいくにつれて、ハイスペックな機材が欲しくなったりするものです。
ある程度予算に余裕があるなら、最初からそれなりの機材をそろえてみてもいいですね。
買ってから後悔しないように、基本的な知識を身に着けてからパソコンや必要な機材を選んでください。