日本HPが販売するENVY 15のクリエイターモデル(15-ep0003TX)をお借りしました。
大容量なメモリ32GBをはじめ、sRGBカバー率約100%の広色域4K OLEDタッチディスプレイも搭載。
15.6インチのクリエイター向けノートPCとしては、ハイエンドクラスの性能を備えたハイスペックマシンです。
どれだけの実力を秘めているのか、各種用途でじっくり検証しました。
目次リンク
HP ENVY 15の概要や特徴
HP ENVY 15がどんなパソコンなのか、特徴を整理すると以下の通り。
各種クリエイティブ用途が快適
4K OLEDモニターの鮮やかな画面
sRGBカバー率約100%の広色域
事務作業やゲーム用途でも活躍
光沢モニターは好みが分かれる
ACアダプターが大きくて重たい
スペックやデザインなど、順にご説明します。
スペック
CPUやGPUなど、今回お借りしたパソコンの基本構成は以下の通り。
OS | Windows 10 Pro 64ビット |
---|---|
CPU | Core i9-10885H |
GPU | GeForce RTX2060 with Max-Q Design |
メモリ | 32GB(16GB×2) |
ストレージ | NVMe M.2 SSD 2TB (1TB×2、RAID 0) |
販売価格 | 289,800円~ |
CPUは第10世代のCore i9-10885Hで、8コア16スレッドで動作周波数は2.40GHz(最大5.30GHz)とノートパソコン向けのCPUとしてはハイエンドクラス。
性能が高い分、最大消費電力(TDP)は45Wとノートパソコン向けCPUとしてはかなり高め。
CPU-Zの結果は以下の通り。
GPUはミドルクラスのRTX2060 with Max-Q Designを搭載。
無印のRTX2060と比べると少し性能はダウンしますが、動画編集やRAW現像などで役立つほか、パソコンゲームも快適に動かせる実力があります。
GPU-Zの結果は以下の通り。
メモリは32GBでストレージも標準仕様で2TB搭載とたっぷり。
プロのクリエイターの方も安心して使えるスペックです。
外観・大きさ
ここからはHP ENVY 15の外観を見ていきます。
高級感のあるメタリックシルバーの天板に、HPのロゴのみという極めてシンプルなデザイン。
クリエイター向けのノートPCは落ち着いたデザインが多いので、スタイリッシュな印象でとてもカッコいい。
仕様上の大きさは358×237mmと、15.6型としては比較的コンパクトに仕上がっています。
分厚さはたったの18mmで、一般的なビジネスバッグに難なく収納可能。
収納スペースが少なめのカメラバッグでも持ち運びやすいサイズです。
裏面はパソコン内部の熱を逃がすために、一部がメッシュ状になっています。
パソコンのパフォーマンスを下げてしまう恐れがあるため、通気口をふさがないように注意しましょう。
重量は実測で約2kg。
それなりにずっしり感はあるものの、問題なく持ち運べる重さです。
ACアダプター
ACアダプターは200Wの大容量タイプが付属。
消費電力の高いCPUやGPUを搭載しているため仕方ありませんが、ACアダプターは大きくて重たいです。
ACアダプター単体の重量は約620g。
仕様上のバッテリー駆動時間は約6.5時間ですが、重い作業は消費電力も高くなるため基本的にACアダプターへの接続をおすすめします。
ちょっとした事務作業程度であれば、半日程度は持ちそうです。
インターフェイス
ここからは各種インターフェイスを見ていきます。
- ヘッドフォン・マイクコンボポート
- USB Type-A ×1
右側のインターフェイスは最小限。
- 電源コネクタ
- USB Type-A ×1(USBチャージ対応)
- HDMI 2.0 ×1
- USB Type-A ×2(Thunderbolt 3対応)
- MicroSDカードスロット
左側のUSB Type-CはThunderbolt 3に対応しており、外部モニターへの映像出力も可能。
Type-AのUSBポートとともに、電源オフ時のUSBチャージ機能にも対応しています。
背面に入出力ポートは何もありません。
さらにBluetooth 5はもちろん、次世代通信規格のWi-Fi 6にも対応しています。
キーボード
今回お借りしたモデルは英字配列なので、国内で販売される日本語配列とは多少異なります。
指紋認証機能のほか、左右にはBang&Olufsenの内蔵デュアルスピーカーも搭載。
業務上テンキーを多用する方は外付けで対応しましょう。
配列に目立ったクセもなく、打鍵感もノートPCとしては悪くありません。
プリインストールされている専用ソフト(HP Command Center)を使えば、イコライザー(音質)の調整もできます。
ノートPCとして考えるとサウンドは悪くないですが、こだわりのある方は素直に外付けの音響機器につなげたほうがよさそう。
タッチパッドは一体型で、タッチジェスチャーにも対応。
サラサラとした質感で使いやすいです。
単色のバックライトも搭載しているため、暗い場所で操作するときもミスタイプを防げます。
ディスプレイ
ディスプレイは15.6型の4K UHD(3,840×2,160)解像度。
OLED(有機EL)かつグレア(光沢)仕様ということもあり、画面のコントラストが高く、写真や映像の色がとても鮮やか。
さらにタッチディスプレイにも対応しています。
ただし、使用環境によっては室内灯などがガッツリ映り込むため要注意。
たしかに画面はきれいですが、ノングレア(非光沢)に慣れている筆者としては少々違和感を感じます。
約92万画素のWebカメラも搭載されているため、zoomやSkypeなどでオンライン会議を頻繁に利用する方も安心。
カメラのON/OFFをワンタッチで切り替えられるのも便利です。
画質にこだわる方は外付けのWebカメラを買いましょう。
タッチペンには非対応です。
sRGBカバー率約100%
i1 Profilerでディスプレイの色域をチェックした結果は以下の通り。
- sRGBカバー率:100%
- AdobeRGBカバー率:94.9%
動画編集や写真、イラストなど、Webで完結する業務ならバリバリ仕事で使える色域の広さ。
計測はしていませんが、仕様上ではDCI-P3カバー率も100%です。
AdobeRGBカバー率も十分高いですが、印刷を前提とした業務ではさすがにカラーマネジメントモニターが必要になるでしょう。
プライベートで使う分には十分すぎるスペックです。
クリエイティブ性能の検証
ここまでHP ENVY 15の基本的なスペック面をご紹介しました。
ここからは実際に各種ソフトウェアを動かして、どれくらい快適に作業できるかを見ていきます。
ちなみにHP ENVY 15にはNVIDIAのStudio Driverがプリインストールされています。
ゲームで遊びたい方はGame Ready Driverへの切り替えをおすすめしますが、写真や動画の編集など、クリエイティブ用途で使うならStudio Driverのまま使いましょう。
HP Command Centerからもパフォーマンスモードの変更が可能。
重い作業をするときは静音性よりパフォーマンスを重視したほうが快適です。
今回、検証で使用したソフトは以下の4つ。
- Photoshop
- Lightroom
- Premiere pro
- Illustrator
順にご紹介します。
Photoshop
まずは画像加工ソフトの代名詞的存在、Photoshopでテスト。
4K OLEDディスプレイは写真が見違えて繊細に見えます。
高性能なCPUかつメモリも32GB搭載しているため、サックサクに動かせて快適。
数百GBになるような重いPSDデータを扱うときも、スムーズに動かせるでしょう。
高解像度の写真データに各種フィルターを適用したところ、いずれも2~3秒で処理が完了。
さすがに多少の時間がかかるものの、一般的な薄型ノートパソコンと比べれば抜群に快適です。
Lightroom
続いてLightroomの動作をチェック。
4Kの高解像度モニターでも遅延を感じることなく、スムーズに現像が可能です。
等倍表示もほぼ遅延なく表示できますし、各種プリセットもスムーズに反映されて非常に快適。
有効画素数3,635万のニコンD810で撮影したRAWデータ100枚をLightroomで書き出したところ、かかった時間は1分59秒。
主なCPUと結果を比較したグラフはこちら。
Core i9-9900K | |
---|---|
Core i9-10885H | |
Core i7-9700K | |
Core i7-10750H |
ハイエンドクラスのデスクトップPC並みのスピードです。
sRGBカバー率100%と色域も広く、1分1秒が惜しいプロカメラマンにも安心しておすすめできるハイスペックマシンです。
Lightroomの書き出し条件は以下で統一しています。
画像形式 | JPEG |
---|---|
画質 | 100 |
カラースペース | sRGB |
画像のサイズ | 未調整(撮影データそのまま) |
解像度 | 350 |
メタデータ | すべてのメタデータ (人物情報や撮影場所の情報は削除) |
Premiere pro
動画編集の性能をチェックすべく、Premiere Proをインストール。
こちらも処理が重くなるような場面は一切なく、終始スムーズに編集できました。
メモリが32GB搭載されているため、4K動画の編集やAfter Effectsで凝った演出を加える作業もスムーズに動作可能。
ストレージも2TBとかなり余裕があるため、Youtubeに日々動画をアップロードしている方も快適に使えます。
メモリは32GB以上に増やせません。
4K動画の書き出し
4K動画の書き出しに、どれくらい時間がかかるかも検証しました。
検証のために用意したのは、GoPro HERO7 Blackで撮影した4K 60fpsの動画データ。
書き出し条件とかかった時間は以下の通り。
H.264(Youtube 1080p FHD) | 24:02 |
---|---|
H.264(Youtube 2160p 4K UHD) | 25:11 |
一般的な薄型ノートパソコンだと40分以上かかることもザラなので十分速いですが、もう少しスピードがでるかなと期待していました。
Illustrator
Illustratorをスムーズに動かせるかどうかもチェック。
ちょっとしたロゴを作ったり、高解像度の写真データを埋め込んだチラシ用の印刷データを整えたり、いずれもスムーズに動かせました。
商業印刷を想定した、重たいデータでもサクサク動かせるでしょう。
AdobeRGBカバー率は94.9%なので、厳密な色合わせにはカラーマネジメントモニターが必要です。
各種ベンチマーク結果
各種クリエイティブソフトを快適に動かせることがわかったところで、ここからは各種ベンチマークソフトの検証結果をご紹介します。
まずはパソコンの総合的な性能をチェックするベンチマークソフト、PCmark 10のスコアは4,854でした。
写真や動画の編集はもちろん、ExcelやWordなどの事務作業もサクサクこなせるスコアです。
計測結果はいずれも当サイトで検証したものなので、あくまで参考程度にお考えください。
CINEBENCH
CINEBENCHでCPUの性能をチェックした結果がこちら。
当サイトで検証したR15のスコアを比較すると以下の通り。
Core i7-10700 | |
---|---|
Core i9-10885H | |
Core i7-9700 | |
Core i7-9750H |
世代が異なるとはいえ、デスクトップパソコン向けのCPU、Core i7-9700Kのスコアを上回りました。
ノートPC向けCPUとしてはトップクラスの性能です。
Crystal Disk Mark
CrystalDiskMarkでストレージの転送速度もチェック。
2台のストレージを1台のように認識させて高速化する、RAID 0が使われていることもあり、読み込みで約3,200MB/sと素晴らしいスコアでした。
書き込みは若干速度が落ちるものの、約3,000MB/s出てますから実用上はまったく問題なし。
一般的なSSD(SATA)やHDDと平均的な転送速度を比較すると、以下の通り。
NVMe M.2 SSD (Gen4) | |
---|---|
NVMe M.2 SSD | |
SSD(SATA) | |
HDD |
今のところGen4に対応したM.2 SSDは第3世代RyzenとX570チップセットのマザーボードの組み合わせでないと使えません。
Fire Strike
主にパソコンゲームを動かすうえで重要な指標となる、3DMarkのFire Strikeを走らせたところスコアは11,503でした。
主なグラフィックカードとスコアを比較すると以下の通り。
RTX2060 | |
---|---|
GTX1660 SUPER | |
RTX2060 Max-Q | |
GTX1650 |
HP ENVY 15に搭載されているRTX2060はMax-Qタイプなので、スコアが低めに出ています。
とはいえ動画編集などの用途で使う分には十分な性能です。
オンラインゲーム
ゲーム用途のパソコンではありませんが、参考までに各種ベンチマークソフトも走らせました。
いずれも解像度は1920×1080(フルHD)のノートPCに設定。
重量級ゲームのFF15は標準品質で「快適」という結果に。
重いゲームでもグラフィック設定を適切に調整すればスムーズに動作可能です。
人気MMORPGのFF14やドラクエXはグラフィックがかなり軽いため、最高画質でサクサク。
4K解像度でも「快適」という結果が出ました。
FF15
高品質 | 5850(やや快適) |
---|---|
標準品質 | 7665(快適) |
軽量品質 | 9705(とても快適) |
FF14 漆黒の反逆者
最高品質 (フルHD) | 12838(非常に快適) |
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最高品質 (4K) | 4477(快適) |
ドラゴンクエストX
最高品質 (フルHD) | 15025(すごく快適) |
---|---|
最高品質 (4K) | 5629(快適) |
ハイスペックなクリエイターPC
レビューのまとめとして、HP ENVY 15の特徴を再度おさらいしておきます。
各種クリエイティブ用途が快適
4K OLEDモニターの鮮やかな画面
sRGBカバー率約100%の広色域
事務作業やゲーム用途でも活躍
光沢モニターは好みが分かれる
ACアダプターが大きくて重たい
動画や写真、イラストから事務仕事まで、幅広い用途で活躍するクリエイターPCです。
販売価格は289,800円~で、手軽にポンと出せる金額ではないものの、投資に見合った価値を十分実感できるスペックが備わっています。
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